好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】


(――……血?)
 

口を押さえた手が、まだらに紅く染まっている。
 

咳込みは続く。


手では押さえきれなくなって、一際大きく咳込んだとき、床にまで飛び散るほどの血がこぼれた。
 

血が焼かれていく。もしかして今、真紅の血が覚醒されたのだろうか。


「……は……」
 

思わず苦笑がもれる。
 

短い時間でさえ、あの子の傍は許されなかったのか。
 

桜城の家とは縁切りして、退鬼されるまでの少しの時間でも傍にいられたらと願った。


真紅に出逢えたことだけでも幸福だと思って、死ぬことに諦めるつもりだった。
 

だが、そうするなと本人が厳しく言って来た。


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