好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】
「白ちゃん……何があったの?」
白桜は、まだふらつきの残る真紅の手を引いて走る。
先導するのは『みお』と呼ばれた青年。非常階段を駆け上がる。
「真紅を狙う一番の危難は退治てきた。しばらくは妖異に狙われる心配はしなくていい」
それが先ほど話していた烏天狗という妖異のことだろうか。
「だが、黎明のは状況ははっきりしない。とにかく、行くしかない」
「若君、御門の主、こちらです!」
みおは非常階段から棟内へ繋がる扉を開けた。
そして一番近くにあった部屋へ導く。
「父さん、若君たちが」
「ああ」
部屋の中にいたのは壮年の白衣の男性。
その傍にはソファがあって、目を閉じた黎が横たわっていた。
「黎!」