好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】
「れい……?」
大きく目を見開くと、眦に溜まった涙が一気に流れ落ちた。
「真紅? ……どうした、そんなに泣いて……」
そっと、黎の指が真紅の頬を拭った。
これは……夢? それとも、神様とかいう存在が二人にくれた最期の時間だろうか――。
真紅の思考が、浮かんでしまったそんな考えを否定しようとしたとき、黒藤から笑声がもれた。
「黒!」
白桜が叱責するが、黒藤は肩を震わせている。
「いや、すまない。真紅、黎。なあ、白。俺たちは始祖の転生の力を甘く見過ぎていたようだ」