好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】


紅緒の目覚めと真紅の封じが一日早く解かれたのは、総て黒藤による操作の所為だ。


紅緒のかけた封じに綻びはなく、黒藤が何もしないでいたら、双方の目覚めは予定通り明日だった。
 

黒藤の企みを聞かされた紅緒は納得のいかない顔で、やっと暴れるのをやめた。


紅亜が安堵の息をついている。


「……それで、真紅はどうしたのです。真紅の封じを早く解きたいだけの理由は見当たらない」


「母上には予定外の来客がいまして。今は隣の部屋に、真紅は恋人といま


「真紅―!」


「だから叫ぶんじゃないっ」
 

黒藤の言葉を聞き終わる前に、紅緒は姉を振り切って飛び出した。


「……お前の母上、評判通りだな」


「少しは落ち着いてほしかったなあ……」
 

さっきまで悪の親玉的企みをしていた黒藤が一転、疲れた顔で言う。


< 420 / 447 >

この作品をシェア

pagetop