好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】
紅緒の目覚めと真紅の封じが一日早く解かれたのは、総て黒藤による操作の所為だ。
紅緒のかけた封じに綻びはなく、黒藤が何もしないでいたら、双方の目覚めは予定通り明日だった。
黒藤の企みを聞かされた紅緒は納得のいかない顔で、やっと暴れるのをやめた。
紅亜が安堵の息をついている。
「……それで、真紅はどうしたのです。真紅の封じを早く解きたいだけの理由は見当たらない」
「母上には予定外の来客がいまして。今は隣の部屋に、真紅は恋人といま
「真紅―!」
「だから叫ぶんじゃないっ」
黒藤の言葉を聞き終わる前に、紅緒は姉を振り切って飛び出した。
「……お前の母上、評判通りだな」
「少しは落ち着いてほしかったなあ……」
さっきまで悪の親玉的企みをしていた黒藤が一転、疲れた顔で言う。