好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】


クエスチョンマークばかりを浮かべている黎。


紅緒の存在も知っているかいないかというくらいで、一番現状を理解出来ていないのは黎だろう。


それなのに投げ飛ばされたとは不憫な……。


「黎明の。着物の方は、影小路が先代で黒藤の母であり、真紅の母君の、双児の妹にあたる方だ」


「双児? 真紅と黒藤の母は姉妹なのか? じゃあ真紅は……」


「俺の従妹だ。突然の母の暴挙、代わって謝罪する。短気な母だったが、さすがに非道すぎる。すまなかった」


「いや、黒藤に謝られても……その前に、なんで俺は投げられたんだ?」
 

そこからか。


真紅は一層強く黎の腕に抱き付いている。


離れないことが、真紅なりの黎の護り方なのだろう。


姉妹は未だに言い合っている。


十六年ぶりに逢って、すぐに姉妹喧嘩って。


黒藤は大きく息をついた。

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