好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】
「仕事遅いと怒鳴られるよ」
傍らに立つ長身の人物は、黎が「じいさん」と呼ぶ人の孫。
小埜澪(おの みお)。
怜悧な声で言い置き離れようとしたが――
「……黎?」
ぼけーっとしている旧知を不審に思い、振り返った。
黎は生粋の美形だ。
特に手入れをしているわけではないようだが、そのまま、天然でかっこいいのだ。
ふざけんなよと何度思ったことか。
……しかしまあ、それも人外ゆえと言われればそこまでだ。
人ではないと言うのは、ある種神に近いということだ。
神は人間が創造して、想像して存在する。
誰にも考えられない、思いつくこともない神というのは存在しない。
存在を認識されて初めて存在するのだ。
存在が人よりも魔性に、あるいは神に近い鬼は、それに引きずられように美しくある。
最初の人間がそう思ったからだろうか。