好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】



一人の家。
 

それが当たり前だったのに。
 

……淋しさを、初めて感じていた。
 

母と仲が悪いわけではない。
 

料理があまり得意ではない真紅を心配して、母は毎日ごはんを作ってきてくれる。
 

入院施設のある個人医院で看護師をしているので、時間はまちまちだが昨日は朝に来てくれていた。
 

その間はアパートに母子が揃い、一時の笑顔が飾られる。
 

だから、それ以外の時間が独りだというだけで、別段問題があることはなかった。

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