クールな公爵様のゆゆしき恋情 外伝 ~騎士団長の純愛婚~
「……サウル王子に頼られていると思うと気分が良くなったんです。辺境伯様さえ知らないシハレフの秘密を俺だけが知っていると思うと、特別な人間になった気がした。昔から何をやっても上手く行かなくて、このままだとベルツ家の後継者から外すと言われて、焦っていたのもあったんです。俺が後を継がずに分家から養子を貰うことになったら、カサンドラの居場所が無くなってしまうかもしれないから。でもサウル王子の役に立ったら、父上からも認めて貰えるんじゃないかと思って……」

 ヘルマンは懺悔をしたいのか、さめざめと泣き後悔の気持を訴える。

 不器用で要領が悪くて、努力が直ぐに結果に繋がらない人なんだろう。
 そのため、強いコンプレックスを抱いている。

 でも、心根は優しいところがあるのだと思う。今回のことの動機の一番の理由は、妹の将来を心配してのことのようだし。

「あなたが反省して後悔しているのは分かったわ。でも謝るのは後でにして今は無事に帰ることを考えましょう」
「は、はい……そうですよね」

 ヘルマンはすっかり汚れてしまっている服の袖でゴシゴシと涙を拭くと、大人しく口を閉ざした。

 と言っても何か状況が変わった訳ではない。
外は静かで、人の気配も感じない。

 静かになった部屋で考える。
 サウル王子は私をどうするつもりなのだろう。

 本性が知ってしまった以上、やすやすと解放してくれるとは思えない。
 そのうち口封じに殺されてしまうかもしれない。
 そう考えると、恐怖で震えそうになる。

 でも……私は偶然サウル王子の秘密を知ってしまったわけじゃない。

 サウル王子自らが私に、その本性を明かして来たのだ。

 それは何のために?

 善人の仮面を脱ぎ捨て、冷酷な目で私を侮辱する言葉を吐いたのは何のため?

 サウル王子の目的は何なのだろう。

 ヘルマンに言った、【バラークとの同盟を妨害する為】でないことだけは確かだけれど、分からない。

 考え込んでいると、それまで黙っていたヘルマンが小さな声で呼びかけて来た。
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