クールな公爵様のゆゆしき恋情 外伝 ~騎士団長の純愛婚~
 ヘルマンも足音が聞こえたようで、青ざめながら言う。

「ほ、本当だ……こっちに近付いてくる」
「サウル王子かしら?」

 不安を感じながら立ち上がる。
 立ったところで状況は変わらないけれど、落ち着いて座ってなんていられない。ヘルマンも私に釣られるように立ち上がった。

 ふたりして緊張しながら様子を窺っていると、足音は迷いなく私達のいる部屋に近付き、部屋の前でぴたりと止まった。

「ひっ……どうなるんだ」

 ヘルマンが裏返った声を出したのと同時に、扉が鈍い音を立てて開いた。

 思わず悲鳴を上げそうになるのをぐっと堪えて、平静さを装おうとする。

 こんなときに混乱して取り乱すのは、一番駄目だと言われているから。
 だけど理性では分かっていても、感情を制御するのは難しい。

 臆病なヘルマンに呆れていたけれど、人の事をどうこう言えない程、私も身体中震えていた。
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