クールな公爵様のゆゆしき恋情 外伝 ~騎士団長の純愛婚~
「私に協力して辺境伯に助けを求める気が無いのならば、グレーテ姫にはここで死んで貰おう。その後は遺体をアンテス領に送りつけよう。その方が見捨てられた悲劇の姫として、領民達の同情を買えるだろうからな」

 サウル王子は無情な言葉を吐き、それから私を捕らえるべく腕を伸ばして来る。

「あ……」

 逃げなくてはと思うのに、恐怖で身体が固まってしまって動かない。

 もう駄目だと思ったその時、勢いよく身体を突き飛ばされ、私は床へ倒れ込んだ。

「お前! どうして⁈」

サウル王子が、上擦った声を上げる。

「グレーテ様、逃げてください!」

 声の方を向けば、ヘルマンがサウル王子を抑えようとしているところだった。
 いつの間にか、自力で腕を拘束していた縄を外していたようで、サウル王子の腰辺りにしがみ付いている。

「ヘルマン⁈」

 あのヘルマンが、危険を顧みず私を庇おうとするなんて。
 驚く私にヘルマンは必死の形相で訴えて来た。

「早く逃げてください!」
「え、ええ!」

 逃げろと言われても、どこへ行けばいいのか判断がつかない。
 この部屋から出たところで逃げ切れるのだろうか。

 だけど、ヘルマンが勇気を出して作ってくれた機会だ。

 私はもつれそうになる足を必死に動かし、部屋から駆け出す。

 サウル王子の怒鳴り声と、ヘルマンの悲鳴を背後に聞きながら。

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