クールな公爵様のゆゆしき恋情 外伝 ~騎士団長の純愛婚~
「恐かった……もう駄目だと思ったの」

 震えながら、離されまいとしがみつく。リュシオンは私の背中にそっと腕を回し抱き寄せてくれた。

「助けが遅れてしまい、申し訳ありません」

 リュシオンの穏やかな低い声が耳に届く。私が安心出来る声。

「大丈夫。もう怖いことはありません」
「でも……怖かったわ。私、殺すって言われて……」

 泣きながら訴えると、リュシオンの身体がビクリと震えた。

「……間に合って良かった」

 言葉と共に、強く抱きしめられる。

「リュシオン……」

 リュシオンの逞しい腕に包まれていると、心から安心する。

 あらゆるものから守られていると感じて、サウル王子から受けた恐怖が、だんだんと和らいで来る。もう、大丈夫なんだと思えるから。

 ずっとこうして包まれていたいけれど、リュシオンは私が少し落ち着いたのを見ると、背中に回った腕を解いてしまった。

 それから私の頬の涙をそっと拭うと、労わるような優しい声で言った。

「サウル王子は建物の中ですか?」

 どうしてかは分からないけれど、リュシオンはサウル王子が関係していることを知っているようだ。

「……さっきまではいたわ。ヘルマンが私を逃がしてくれたの、でも今は分からない」
「ヘルマン様が?」

 リュシオンは意外そうに呟く。

「サウル王子に捕まりそうになった時庇ってくれて、その隙に私は逃げたの。でも足止めもそんなに持つとは思えないから心配だわ」
「分かりました。直ぐに救出に向かいます。グレーテはここで待っていてください」
「え……」

 ここに置いていかれるのは、不安で仕方無い。
 顔を曇らせる私の気持ちを分かっているのか、リュシオンは安心させるような穏やかな声で言った。

「グレーテには充分な護衛をつけるし、私も直ぐに戻ります。あと少しだけ頑張ってください」
「リュシオン……分かったわ」

 本当はリュシオンと一時だって離れたくないけれど、ろくに歩けない私がいては足でまといだ。

 わがままを言ってこれ以上時間を取らせるわけにはいかない。ヘルマンは、まだ危険の中にいるのだから。
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