クールな公爵様のゆゆしき恋情 外伝 ~騎士団長の純愛婚~
 私が頷いたのを見て、リュシオンがフレッドに告げる。

「これより予定通り突入するが、フレッドはこの場に残り、グレーテ姫を守れ。味方以外誰一人近づけるな」
「はい」

 命令を受けて、フレッドは少し離れたところにいた騎士達に指示を出す。

 その間に、リュシオンは私を抱き上げ、近くにあった大きめの木の側に運んでくれた。
 大きな樹の幹に背中を預けると、少し身体が楽になった。

「足を酷く痛めていますね。医者に診せるまで、無理に動かないように」
「ええ。大人しくしているわ。だからリュシオンも無理をしないでね」

 そう微笑んだとき、慌しい足音が聞こえて来た。

 サウル王子が追いかけて来たの? 無意識にリュシオンの腕に手を伸ばす。

「グレーテ大丈夫だから」

 リュシオンが宥めるように言う。

「リュシオン様」

 私が追っ手の気配を感じるより早く、フレッドをはじめとした騎士達は動いていたようで、いつの間にかリュシオンと私を守るように周りを固めてくれていた。

「相手が出て来たのなら手間が省けた。敵は一人残らず捕らえろ。だがサウル王子には危害を加えるな」

 リュシオンが騎士達に対して、私に向けていたものとはまるで違う、厳しい声音で命令を出す。

「はい」

 迎え撃つ準備が整ったところで、サウル王子と、彼に従う数人の私兵が私達の目の前に現れた。

「グレーテ姫!」

 サウル王子に怒鳴られ、恐怖が蘇る。

 だけど、先ほどまでと違って、今はリュシオンと騎士達が側にいる。
 
 
 サウル王子は忌々しそうに周囲の騎士に視線を走らせ、最後にリュシオンを見て吐き捨てた。
「アンテスに戻ったんじゃなかったのか?」

 リュシオンはその言葉に、ゆっくりと立ち上がり応えた。

「シハレフ王子の動向に不審な点が有ったため、アンテスに帰るふりをして近くで待機していました」

 リュシオンの口調は丁寧だけれど、サウル王子を見据える視線はとても冷たく、彼が強い怒りを持っていることが窺える。
< 121 / 164 >

この作品をシェア

pagetop