クールな公爵様のゆゆしき恋情 外伝 ~騎士団長の純愛婚~
「……分からないわ……お姉様のほうが好きってこと?」

 あれ程深い想いを語られた後で、私の方が好きでしょう、なんて思える訳がない。

 だけどリュシオンは私の答えが不満だったようで、整った顔を曇らせた。

「まだ私の気持は伝わっていないようですね……」

 リュシオンはそう言いながら顔を近づけて来る。

 え……これって……。

 その先を考えるより早く、そっと唇が触れ合った。

 その瞬間、私の心臓はこれ以上ないくらい早鐘を打ち、顔に一気に熱が集う。

 どうしよう……私、リュシオンとキスしてしまったみたい。

 至近距離にリュシオンの綺麗な顔が有り、優しい笑みを浮かべ私を見つめている。

 綺麗に煌く黒曜石の瞳。見惚れているともう一度口付けられる。

 ほんの短い間のキスだけれど、ひんやりとした唇の感触はしっかりと残っていて……もうどうしていいのか分からない。

 リュシオンが何を考えているのかも。

 お姉様の事を大切だって言っていたのに。思考停止した私をリュシオンが抱き締める。

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