クールな公爵様のゆゆしき恋情 外伝 ~騎士団長の純愛婚~
私が路面店の店先に並ぶ綺麗なもの、可愛いものなどをキョロキョロと眺めている間もリュシオンはさり気なく周囲を警戒し、私の事を気にかけてくれているようだ。
飛び出た石畳につまずいた時は転ばないように支えてくれたし、余所見をしながら歩く人がぶつかりそうになった時は、自ら盾になって庇ってくれる。他にも私が気付かない内に危険は排除されているのだろう。
さすがは一流の護衛、隙が無い。
でもここで疑問が湧いて来た。
「どうしてフレッドを連れて来たの? 護衛はリュシオンひとりで充分な気がするけど」
「確かに私ひとりでも護衛は可能でしょうが、万が一の事もあります。フレッドが居ればその危険を回避出来ます」
「でも、リュシオンは国一番の騎士なのよ? フレッドに頼らなくても敵なんていないと思うけど」
リュシオンはひとりで屈強なアンテスの騎士を複数相手にしても余裕で勝つ程強いのだから、この平和な城下街で警戒するような相手なんていないと思う。
けれどリュシオンは真面目な顔で否定した。
「自分の力を過信しないようにしています」
その言葉は意外だった。
「過信じゃないわ。リュシオンの力は誰もが認めている事よ?」
国中の数多の騎士達の頂点に立つリュシオン。
それなのに少しも奢ったところがなく、そこが好ましいと思っていたけれど、なんだか今のリュシオンは必要以上に自己評価が低いように感じる。
私のそんな思いを察したのか、リュシオンが言った。
「ひとりでも守り切ると言えない私を頼りなく思っているかもしれませんが、私は臆病者と言われても、過信や油断で大切なものを失いたくありません。二度と後悔したくないのです」
「わ、私はリュシオンの事を臆病者とも頼りないとも思っていないわ。ただ不思議に感じただけなの」
慌てて弁解しながらもリュシオンの言った“二度と”と言う言葉が気にかかって仕方なかった。
もしかしたらリュシオンは、以前に油断をししてしまい、後悔するような失敗をした事があるの?