クールな公爵様のゆゆしき恋情 外伝 ~騎士団長の純愛婚~
 仕事の事に口出ししたのは悪かったのかもしれないけど、あれはただの愚痴で、実際にお父様にお願いした訳じゃない。

 リュシオンに仕事を辞めて欲しいと願った訳じゃない。ただ、もっとリュシオンと一緒に居たかっただけ。

 婚約した今でも、私はリュシオンの仕事の邪魔をしないようにとても気を遣っている。
 会える時間も短くて、いつも寂しいのを我慢していた。
 結婚したらもっと一緒にいられるのだからと、未来に勝手に期待して、現状を我慢していた。でも違かった事がショックだった。



 一緒に住んだら早く家に帰って来て欲しい。
 そう思うのは、私がリュシオンを好きだから。もっと一緒に居たい。話したい。いつもそう願っている。

 だけど、リュシオンにはそんな気持ちは少しもない。
 私との結婚だってお父様の命令だからするのだろう。嫌々命令に従った訳じゃないと言っていたけれど、喜んでいる訳でもない。私個人に対する感心なんてきっと殆ど無いんだ。

 我慢しようと思っていたけど、涙が浮かぶのを止められない。
 婚約していても片思いのこの状況が悲しくて仕方無い。

「グレーテ?」

 私の様子に気付いたのか、リュシオンが慌てて呼びかけて来る。

 こんな所で泣いたらリュシオンも迷惑だろう。私は必死に冷静になれと自分自身に言い聞かせる。

 それで悲しい気持ちが治まる訳は無いけれど。表向き落ち着いた私に、リュシオンが言う。


「先ほどは言い過ぎました。不快な思いをさせてしまい申し訳有りません」
「……いいの。仕事に口出しした私が悪いんだから」
「いえ、もっと他の言い方があったはずです」

 私は首を横に振った。悲しい気持ちは更に膨らんでいく。

「言い方よりも、私はリュシオンとの気持ちの差を感じて悲しくなってしまったの」
「気持ちの差?」

 リュシオンは怪訝な顔をする。全く分からないようだ。

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