クールな公爵様のゆゆしき恋情 外伝 ~騎士団長の純愛婚~
「やけに外出を薦めるのね」

 訝しく思いながらも、私はしぶしぶ外出の支度をする為、深く座っていたソファーから立ち上がった。

 やる気が出た訳では無いのだけれど、ホリーの言う通り、アンテス家の代表として滞在している以上は、部屋に閉じこもっているのはよくないのだ。

「どちらに行きますか?」

 ホリーの問いに、私は少し考えてから「町に行くわ」と答えた。

 湖も気になるけれど、明日の午前中にヘルマン達が領地の一部を案内してくれる事になっている。
 この辺りは馬の産地として有名だから、まずは牧場に案内されると思う。

 その流れで湖にも足を伸ばすかもしれないから、消去法で町を選んだ。

 ホリーが比較的動きやすい衣装を選び、髪も邪魔にならないように手早く纏めてくれる。

 さっきから感じていたけれど、いつになく張り切っているように見える。

「そんなに外出したかったの?」

 鏡越しにホリーを見ながら言う。

「ベルツに来るのは初めてですから、出来るだけ見て周りたいじゃないですか」
「明日、領内を案内してもらうじゃない」

 ホリーは基本的には私と行動を共にする。

「そうですけどベルツの当主様も一緒ですし、気楽に楽しめないじゃないですか」

 確かに明日の外出は公務だから、気楽さは無さそうだ。

 納得していると、ホリーは少し気まずそうに言った。

「それにこの館はちょっと静か過ぎて落ち着かないんですよね」
「……そう言えばそうね、アンテス城とは大違いだわ」
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