捨てられた町
「やっぱりこの家じゃないんじゃないの?」


1時間ほど探し回った時、ついに本がそう言った。


本も随分頑張ってあちこち探してくれていたので、もう疲れ切っている様子だ。


「そんなはずはありません! 間違いなく、この家です! もっと真剣に探してください!」


見つからない事に焦りを感じているせいか、傘は少し怒っている様子だ。


理不尽に本が怒られた本は顔を真っ赤にしている。


「あと探してない場所と言えばどこだろう」


僕はそう言い、首を傾げた。


この1時間でありとあらゆる場所を探し尽くしてしまった。
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