捨てられた町
「この下に入るのか?」


真っ暗な軒下を見てカエルが傘へ向けてそう言った。


地面には小さな石ころが無数に転がっていて、とても痛そうだ。


「残念ながら、私は軒下に入る事ができません」


「は?」


本が傘を見上げてそう言った。


口をポカンとあけて呆れたような、驚いたような顔をしている。


「私の傘は紙でできているので、石などで破れてしまうかもしれないんです」


「じゃぁ、どうするつもり?」


そう聞くと、傘はジッとカエルを見つめた。


この中で一番体が小さくて、軒下に入りやすいのはカエルだ。
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