騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「こ、国王陛下……」
その衛士はダラム国王を見た瞬間、フッと意識を失い予告なく地面に倒れる。腕はダラン……と土の上へと投げ出され、顔色は驚くほど真っ青だ。
「な、なんだ……っ!」
「申し訳ありません。少々気が立っておりまして、手加減はしたものの、足りなかったようです」
と、言葉と同時に姿を現したのは他でもない、ルーカスだった。
艷やかな黒髪、黒曜石のように妖しく光る瞳。
今日は見慣れた騎士団の制服ではない。
婚儀ぶりに見る正装に身を包む彼は気品があり煌びやかで、息を呑むほど美しかった。
胸元につけられた勲章が陽の光を纏って瞬くと、彼の優雅さをより一層惹き立てる。
けれど、そんな彼の右手には襟首──いや、ダラム国の衛士の一人が捕まえられていた。
それは間違いなくダラム国王が連れていた男の一人で、国王の顔が一瞬で青褪める。
「私の行かんとする道の前に立ちはだかったため、少々眠ってもらいました」
言いながら、その衛士をゴミのようにポイッと地面に放り投げたルーカス。投げ出された衛士は口から泡を噴いていて、こちらもどうやら気を失っているらしい。
「ご安心ください。もう一人は、後ろで腰を抜かしているだけです」
一体何をしたらこんな風になるのか……想像しただけでも背筋が凍る。
淡々と、努めて冷静に言葉を紡ぐルーカスだったが、目には隠しきれない怒りの色が滲んでいた。
「我が姫に何か御用であれば、私を通すのが筋でしょう」
温度のない声でそう言ったルーカスの左手には、ダラム国の紋章の彫られたサーベルが握られている。
衛士たちから奪ったのだろうか。サーベルは白銀に怪しく光り、こちらを静かに睨んでいるようだった。