騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「ふん……どんな事情であれ、大切な晩餐会を蹴ってまで飛び出して行ったあなたが、その姿でこの場に現れるなどみっともないにも程があるわ」
「……母上」
見兼ねたオリヴァー国王が声をかけるが、王太后はそれをそっと目で制す。
「オリヴァー、あなたは黙っていなさい。あなたが甘やかすから、各国の皆様の前でこのような恥をかくはめになったのよ」
……彼女は本当に、ルーカスを愛してはいないのだ。王太后の方こそ、このような場で息子を貶すなど、本来ならあってはいけない。
「その、隣の薄汚れた妃も。よく、その姿でこの崇高な場に顔を出せたものだわ」
吐き捨てるようにそれだけを言った王太后は、ルーカスとビアンカを見て忌々しそうに目を細めた。
事情のわからぬ他国の王族たちは困惑し、狼狽えながらも事の成り行きを見守っている。
「……ルーカス。それに、ビアンカ王女。これは一体、どういうことだ」
その中でも国王であるオリヴァーだけが、冷静だった。オリヴァーはいつもの穏やかな表情を消して、ルーカスからの答えを待つ。
「……晩餐会が始まる前、我が妃が攫われました。そのため私は、彼女を取りしに出たのです」
「さ、攫われた……!?」
「どういうことだ!!」
今の今まで黙りこくっていた王族たちが、それぞれに驚きを口にする。
「攫われたとは、一体……。ビアンカ王女が王宮外へでも、出たというのか」
「いえ、彼女が攫われたのは王宮内です。監禁されていた場所も、宮内でした」
ルーカスの言葉に、ざわめきは一層大きくなった。
それは、そうだ。ビアンカが攫われたのが王宮内となれば、犯人は王宮内にいるものと思うだろう。