騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
 


「あなたには、優秀なオリヴァーの王弟であるという自覚が足りないわ」


まるで、この場にいる全員の前でルーカスを貶めようとしているみたいだとビアンカは思った。

彼らの中で、ルーカスという人間がいかに愚かか見せつけ、彼の評価を下げようとしている。


「申し訳ありません。少々緊急事態が起き、正装姿のままで飛び出そうとしたところ、あなたと懇意にある前宰相アーサー殿に因縁をつけられまして」

「……因縁?」


思いもよらないルーカスの言葉に、ビアンカは慌てて彼を見上げて言葉を待つ。


「いくら緊急事態だからといって第二王子である私が、大切な晩餐会を欠席するなど何事だ……と。着ている服は飾りなのか、だったら今すぐ脱いでいけと、嗤われまして」


前宰相アーサーは、ルーカスはこれから処分される人間であると決めつけていたのだろう。

あの男……アストンの元将軍の手により、彼は始末されるものだと信じていたのだ。

結果は、ルーカスの圧勝だったけれど。本来であればビアンカを人質に取っていたあの男の方が、何倍も有利な戦いだったはずだから。


「そのような事情もあり、上着は捨てて外に出ました。私としても、着慣れた騎士団の制服の方が指揮を取りやすかったので」


その言葉に、ビアンカは思わず息を飲んだ。

ルーカスは先ほど、『私を探すためにわざわざ、正装から着替えたのか』というビアンカの質問に、『指揮をとるには、どうにも正装のままだとやり辛くて』と答えたばかりだ。

その時は、何がやり辛いのかと疑問に思ったけれど……。

まさか、そんな背景が隠されていたとは夢にも思わない。

彼はビアンカを一刻でも早く見つけるために正装を脱ぎ、黒いコートを纏って動いてくれたのだ。

 
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