騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「以前から、考えていたことです」
「以前から……? それは一体、いつからだ」
「幼少の頃からです。私が結婚をするのなら、ノーザンブルの第一王女ビアンカと……と、考えていました」
キッパリと言い切ったルーカスの言葉には、迷いがない。
けれど、あまりに突然のことに思考の追いつかないオリヴァーは、「うーん」と唸るばかりだった。
「ノーザンブルは小国ですが、園芸農業の盛んな国でもあります。セントリューズの国土から得られる豊かな恵みをより発展させていく為にも、我々がノーザンブルの技術を学ぶことも必要かと」
言っていることは間違いではないが、取ってつけたような話だとオリヴァーは苦笑いを零した。
オリヴァーの知る限りではノーザンブルは王族と民衆が互いを思い合い、尊重して日々を生きる、平和で穏やかな国だ。その反面、武力では随分と他国に比べて劣っている。
確かにルーカスの言うとおり、園芸農業技術に関してはセントリューズの一歩先を行っているかもしれないが……悪く言えば、それだけの国だった。
ノーザンブルとほぼ同等の技術を持ちながら、武力もそこそこ兼ね備えた国は存在する。
政略結婚を……というのなら、騎士団長かつ第二王子という立場であるルーカスは、セントリューズにとって、より好条件の国の姫君を花嫁に貰うべきだ。