強引社長といきなり政略結婚!?
「朝比奈です」
『もうお帰りですか! 汐里様は?』
「一緒です」
インターフォン越しに彼女の戸惑いが伝わってくる。私が一緒なのに、どうしてインターフォンを押すのかといったところだろう。
すぐに玄関のドアが開けられ、私たちを見た多恵さんの目が点になる。手をパーにして口に当てたまま、その場で凍りついたかのように固まってしまった。
腰を抜かさなかっただけ、まだマシかもしれない。
「あ、あ、あの……これはいったい……」
多恵さんはようやく動きだしたものの、口ごもっているし、目は白黒させている。
「多恵さん、失礼して上がらせていただきます」
朝比奈さんが靴を脱ぐと、多恵さんはすかさずそれを揃え、私たちのあとからスリッパをパタパタと響かせてついてきた。
朝比奈さんはリビングまで私を運ぶと、ソファの上に優しく置いてくれた。
「多恵さん、申し訳ありません!」