強引社長といきなり政略結婚!?

彼が一心に頭を下げると、多恵さんは何事かとさらにオロオロとする。
その声を聞きつけた母が、リビングに顔を出した。


「あら、朝比奈さん。お早いお帰りですね。汐里、楽しかった?」


座っている私に母がのんびりと尋ねる。


「お母様、大変申し訳ありません」


朝比奈さんはもう一度深くお辞儀をした。


「いったいどうされたんですか?」

「実は汐里さんに怪我をさせてしまいました」

「朝比奈さんがさせたわけじゃないから! 私が自分でやったことなの」


慌てて否定する。
それを聞いて、母は「汐里が怪我?」と首を傾げながら私を見た。


「全然大したことないの。馬から落ちて、ちょっとお尻を打っただけ」

「あらまぁ、大丈夫?」

「うん。平気」

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