強引社長といきなり政略結婚!?
「自分の体のことは、自分が一番わかります。平気そうだから行ったんです」
『無理すると、あとで痛い目に遭うぞ』
「無理してません。朝比奈さんからしたら、私の仕事は単なるアルバイトと軽く捉えるのかもしれませんが、私が突然休めば、ゆかりちゃんや他の従業員の人たちに確実に迷惑はかかるんです」
他の人を急に手配することは、なかなか難しいから。そうなると、人がひとり少ないまま店を回さなきゃならなくなる。
お客さんを待たせてしまうかもしれないし、慌てて運んで、なにか粗相をしてしまうかもしれない。
『汐里は、どうして喫茶店で働くことに? なに不自由なく暮らしてきただろう?』
朝比奈さんが唐突に聞く。
やっぱり喫茶店でアルバイトしているお嬢様は珍しいのかな。
……自分でお嬢様と言うのもおこがましいけれど。
「でもここ数年は、父の会社の業績が悪化していましたし、少しでも父の力になれればと思って。あの喫茶店は、働くところを探していた時にたまたま通りがかったんです。働いたこともない私を快く雇ってくれたお店に、迷惑はかけたくないんです」