強引社長といきなり政略結婚!?
『それじゃ、三十分後に』
「えっ、朝比奈さ――」
……切れてしまった。
しばらく放心状態でいた私は、急いで立ち上がった。
パジャマだし、すっぴんだ。このまま会うわけにはいかない。
クローゼットを開き、ハンガーにかかった洋服を引っ張り出し、鏡の前で自分に当てる。
これは気張りすぎだし、こっちはラフすぎる。
ああでもないこうでもないと、気づけば洋服選びに夢中になっている自分がいた。
……私、どうしちゃったんだろう。
ふと我に返る。なんで、必死になって自分をかわいく見せようとしているんだろう。
鏡に映った自分を見て、なんとも不思議な気分になった。
――時間がない!
時計を見てみれば、支度を開始してから二十分が経過している。
結局、白いざっくりとしたタートルネックの膝丈ニットワンピースにレギンスを合わせた。簡単にメイクも済ませたところで、部屋がノックされた。彼が来たようだ。
「汐里様、朝比奈さまがお見えなのですが……」