強引社長といきなり政略結婚!?

彼の顔が近づいたものだから、答えながらドキッとして半歩下がる。


「一成くん、汐里はなかなか丈夫な娘なんですよ。怪我はしょっちゅうでしたが、病気らしいことはなにひとつしていないんです」

「そうなんですよ。ですから、本当にお気になさらないでくださいね」


父の言葉を母が受けて答えた。
両親のお墨付きときている。なんとなく察しはついていたけれど、私はよっぽど頑丈にできているみたいだ。


「よかった」


不意に朝比奈さんの腕にふわっと包み込まれる。
ビクンとして揺れた肩を彼がそっと撫でたところで、母が「まぁ!」と嬉しそうな声を上げるのが聞こえた。

それから四人で紅茶を飲んだあと、「それじゃ、次は今度の週末」と朝比奈さんは言い置いて帰って行った。
いったいなにをしに来たのか。
なんとなく残る甘い余韻に、私はその夜眠れなかった。

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