強引社長といきなり政略結婚!?

◇◇◇

そうしてやってきた金曜日の夜。
今から向かうとメールが入ったのは、午後六時過ぎのことだった。

私も馬鹿正直だなぁと思う。これから朝比奈さんの部屋で映画を観ることを両親に素直に打ち明けてしまった。
まぁ、朝比奈さんが迎えに来れば、一緒に出かけることは否応なしにばれてしまうけれど。

ただ、彼の部屋に行くことは、さすがに黙っておいたよかったかもしれない。両親をはじめ多恵さんまで、妙に浮足立ってしまったからだ。

父は「それなら夕食はうちで食べてもらおう」と、朝比奈さんの分まで夕食を用意させ、母に至っては、「汐里、大丈夫なの?」と意味深な言葉を私に投げかける。
心配性の多恵さんは、いつにも増してオロオロとしてしまった。

そうされると、私にまで緊張が伝染するから控えてほしいのだけど。

朝比奈さんの部屋に行くということは、つまり“そういうこと”になるの?
……いやいや、ただ映画を一緒に観るだけでしょ。
頭の中にいるふたりの私がせめぎ合う。
そうしているだけで疲れてしまった。

多恵さんが腕を奮った料理が並ぶ食卓を、家族以外の人と一緒に囲むのは初めてだった。

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