強引社長といきなり政略結婚!?
「もしかして最初は俺と、とか考えてくれた?」
「べ、別にそういうつもりじゃ!」
朝比奈さんの横顔に笑顔が浮かんだものだから、手も顔も横に振って慌てて否定する。
完全に見透かされていて恥ずかしい。
「ありがとう」
「ですから、違うんですってば! 観る時間がなかっただけですから!」
なんだか、なにを言っても聞き入れてもらえなさそうだ。
朝比奈さんの口角がさらに上がった。
しばらく走った車が塀に囲まれた一角に到着すると、鉄製の格子が自動で開く。そこを通り抜け、また少し走ったところで、二階建てと思しき大きな屋敷が姿を現した。
スポット的にライトが外壁に当てられ、まるで美術館のような様相だ。
「ここに住んでるんですか?」
てっきりマンションで優雅にひとり暮らしかと思っていた。
「父が亡くなるまでは近くにひとりで住んでたんだけど、祖父をひとりにしておくわけにもいかなくてね」