強引社長といきなり政略結婚!?
実の祖父なのに“会長”と呼ぶみたいだ。
「大旦那様はすでにお部屋でお休みになられております」
真紀さんの言葉に少なからずホッとする。
ひとり暮らしだとばかり思っていただけに、彼の家族に会う心の準備ができていなかったから。
「随分と早いね」
「はい。少しお疲れのご様子でございました。ささ、どうぞお入りくださいませ」
真紀さんは腰を低くするようにしてドアを開けると、私たちを中へ招き入れてくれた。
広い玄関を入るとすぐ左手にある階段を朝比奈さんにエスコートされ上がる。二階へ到着すると、彼は人差し指を自分の口もとに当て「しー」という仕草をした。おじい様の部屋がこの近くにあるのかもしれない。
言われたように口をつぐみ、足音にも気を配る。
彼の部屋は階段を上がって右に折れ、いくつか部屋を通り越した突き当たりだった。
二十畳ほどの部屋にはベッドと大きなテレビに向かって配置されたソファとテーブル。ドアのない出入口の向こうにある続きの間は書斎なのか、壁一面に埋め込み式の本棚があり、本がたくさん並んでいる。部屋の隅にはベンチプレスやダンベルもあり、ここで軽いトレーニングなんかもしているようだ。