強引社長といきなり政略結婚!?
チラッと見るだけのはずが、思わず二度見してしまった。
私の視線に気づいた朝比奈さんがこちらを向く。彼は、慌てて涙を手で拭った。
「……カッコ悪いところ見られたな」
即座に首を横に振る。
朝比奈さんが泣くとは思わなかったけれど、カッコ悪くはない。それどころか、そんな彼の姿を見て、私の心臓はさらに鼓動を速めたくらいだ。
バッグからハンカチを取り出し、彼に差し出す。
「サンキュ」
朝比奈さんはそれを素直に受け取り、目頭を拭った。
「汐里は、もう慣れっこか」
「いえ、そうじゃありません」
何度見ても号泣だ。
――いつもは。
「今日は映画どころじゃなかっただけで」
朝比奈さんは私の受け答えに軽く首を傾げた。