強引社長といきなり政略結婚!?

私が逸らした視線の先には、彼につながれた手。
それに気づいたらしい朝比奈さんは、軽く息を吸い込んだ。


「これのせい?」


手を持ち上げて私を見る。
素直に認められなくて、体がこわばる。ただ、目だけは誤魔化せなくて、自分でも驚くほどに瞳が揺れてしまった。
朝比奈さんの目元に笑みが浮かぶ。


「映画が観終わる前にこの手を振り解かれたら、今夜はなにもせずに汐里を帰そうと思ってた。でも……」


……でも?

思わず息を呑む。
私はやっぱりどうかしちゃったのかもしれない。“なにもせずに”帰してほしくないと思うなんて。
朝比奈さんが体ごと私のほうを向いた。


「つながれたままだったってことは、俺に対する拒絶反応がなくなった。違う?」

「ち、違います」


心と裏腹な言葉が口から漏れる。今まで何度となくつっぱねてきた手前、そう簡単にしおらしくはなれない。

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