強引社長といきなり政略結婚!?
「違う? ほんとに?」
朝比奈さんが私との距離を詰めてくる。
さらに近づく彼の顔。
心臓の音が体中に反響して、胸が波打っている感覚だった。距離を保とうと背筋をのけ反らせると、うっかりソファに倒れ込んでしまった。
レザーの冷たい感触が背中に当たる。
朝比奈さんは、私の顔の両脇に手を突いて覆い被さった。
目を見開いた私に、彼が優しく微笑む。
「汐里が嫌なら、これ以上はなにもしない」
朝比奈さんは片方の手を突いたまま、もう片方の手で私の手を取った。それを自分の胸へと当てる。つっかえ棒のような感じだ。
「嫌だったら、俺を突き飛ばせばいい」
朝比奈さんはまっすぐな瞳で私を見下ろしていた。
私の両腕に入る力。
いつの間にか変化が訪れていた自分の気持ちに、頭が追いつかない。どういう命令を腕に下せばいいのか迷って、心が惑う。おかしなことに、呼吸までうまくできなくなった。
胸を上下させて、なんとか酸素を取り込もうとする。けれど、いくら吸い込んでも体が楽になりそうにない。