強引社長といきなり政略結婚!?

「ということは、朝比奈さん、ご結婚されるの?」


質問した男性の隣にいた若い女性が尋ねる。
それに朝比奈さんは「はい」と迷いもせずに答えた。“藤沢ゴルフ倶楽部がほしいから”という裏事情は、その言い方からは感じられない。
でも、もしかしたらそれは、私がそうであってほしくないと願うからなのか。
まだ大きく胸に残るわだかまりは、溶けたわけじゃなかった。


「汐里、疲れない? 少し休もうか」

「そうですね」


体は平気だけれど、精神的には疲れたというのが正直な感想だ。
たくさんの人たちと同様の会話を続けているうちに、一時間が経っていた。


「それじゃ、あそこで座って待ってて。飲み物を調達してくるから」


朝比奈さんは壁際に並べられた椅子を指さし、私の手を一度ギュッと握ってから離れた。

椅子に座り、彼の動向を遠巻きに眺める。
ピンと伸びた背筋。凛とした佇まい。スマートな仕草。どれをとっても、この会場にいる誰も彼に叶わないだろうと思える。

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