強引社長といきなり政略結婚!?
「朝比奈さん、お顔を上げてください。ほら、汐里ったら、朝比奈さんにやめてもらって」
母が慌ててそう言うけれど、私が止めたところで一成さんはきっと頭を上げないだろう。
「いえ、婚約もまだだというのに、大切なお嬢さんを外泊させてしまいましたから。本当に申し訳ありません」
「一成くん、そんなに恐縮しなくていいから」
見かねた父が宥めたことで、一成さんはやっと顔を上げた。座るように促されて、彼が腰を下ろす。
「いや、まったくもって恥ずかしいですよ」
父が頭のうしろを掻く。
「汐里だって、もうそういうことがあってもいい年ごろだというのに。昨夜はつい焦ってしまってねぇ。電話を放り出してしまったよ。情けないったらないね」
母が突然電話を代わったのはそういうことだったのか。