強引社長といきなり政略結婚!?

「あ、いえ、そろそろかと思ってはおりましたが、たまたま通りがかったら車のエンジン音が聞こえまして」


振り返りながら彼女は答えた。
一成さんの別荘を出発する時に、多恵さんには“今から出る”とメールを送っておいたのだ。

誰もいないリビングのソファに一成さんと並んで座る。
多恵さんは、ふたりを呼びに出ていった。


「急ぎの用事って?」

「会長に会って、そのあとは日下部と打ち合わせ」


昨日の様子だと、パーティー会場から会長さんとあの女性を振り切って来てしまっただろうから、激しく叱責されるんじゃないだろうか。
私の不安に気づいたのか、一成さんは「心配いらないから」と私の手を握って笑った。

ドアが開けられると同時に、彼が素早く立ち上がる。


「藤沢社長、申し訳ありませんでした!」


九十度に腰を折り曲げる彼の脇で、私も「ごめんなさい」と謝った。
それを見て父が目を見開く。

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