強引社長といきなり政略結婚!?

「承知いたしました。こちらといたしましても、できる限り好条件を提示したいと思っておりますので」


父の言う“考え”ってなんだろう。おじさんを納得させられるような施策でもあるんだろうか。
そんなことをぼんやりと考えながら、一成さんの車を見送った。

リビングへ戻ると、多恵さんがひとり、後片づけをしていた。トレーにカップをすべて載せ終えると、それをテーブルの端へと置く。
そして、「汐里様」とやけに神妙な顔つきで私を見た。


「西野様のことでございますが……」

「西野って、浩輔くんのこと?」


問い返すと、多恵さんは黙ってうなずいた。


「実は家政婦協会のつてで伺った話がございまして」


もともと大きいほうとは言えない声を、多恵さんはさらに小さくした。
よく聞き取れるようにと、テーブル脇に両膝を突いていた彼女のそばに私もしゃがみ込む。
すると多恵さんは、「汐里様はこちらへお座りくださいませ」とソファを勧めてくれた。

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