強引社長といきなり政略結婚!?

あのセリフを直接彼に聞かれたわけではないのに、耳がやけに熱い。顔じゅう真っ赤になっていることは、自分でもわかった。電話でよかったとつくづく思う。

一成さんの気持ちに反発していた過去があるから、あっさりとその手に陥落したことがちょっと悔しい思いもあるのだ。


『社内の調整もあるから、しばらく会う時間を取れないかもしれない』

「そうですか……」

『寂しい?』

「いえ、大丈夫です」


一成さんがふたりのために動いてくれているのだ。会えないからといって、“寂しい”とわがままは言っていられない。
電話の向こうで一成さんがなにか言ったように聞こえたものの、聞き返しても『なんでもない』と答えた。

おやすみと言い合い、電話を切る。

寝る前に好きな人の声を聞くことが、こんなに幸せだとは知らなかった。胸の奥がぽかぽかしている。
もぐり込んだベッドの中で、すでに通話の切れたスマホを握り締めながら瞼を閉じた。

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