強引社長といきなり政略結婚!?

◇◇◇

昨夜、遅く帰ってきた父は、私がアルバイトへ出かける時間になっても起きてこなかった。孝志おじさんとの話し合いに相当疲れたようだ。

多恵さんに見送られて家を出る。

三月の初旬。たまに感じる穏やかな春の空気に心が和む。でもそれは、一成さんとの電話の余韻がまだ残っているせいもあるかもしれない。
ペダルを踏んで自宅の門を出た時だった。


「汐里」


名前を呼ばれて急ブレーキをかける。その衝撃で、上半身が前に少し倒れ込んだ。
浩輔くんだった。


「今から店?」


運転席のドアを閉め、彼が私のほうへ近づいてくる。


「うん。この前はごめんね」

「いや。朝比奈一成もなかなか強引なことをするよね」


信号待ちで停車していたとはいえ、車の前に立ちはだかったことは確かに強引だ。

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