強引社長といきなり政略結婚!?
◇◇◇
「汐里さん、ここからの勝算は?」
七番ホールまで進んできた私たち。
ゴルフバッグからドライバーを取り出したところで、日下部さんが意地悪な顔で近づいてきた。
大人気なくプイと顔をそむけると、クスッという笑みが漏れ聞こえた。
六番まで終わって、おじい様とのスコア差は六、綾香さんとは十一もある。
パーを取れたのは、わずかに一回だけ。それ以外はずっと一か二オーバー。
いつもより調子が悪いというわけじゃない。むしろ好調なほうなのに、綾香さんとの差は広がるばかり。馴染みの深いゴルフ場を選んでもらったアドバンテージは、まったく活かせていなかった。
ここから逆転なんて、天変地異が起きたって無理だ。
おじい様と綾香さんは、おしゃべりしながらクラブを選んでいた。
無謀な挑戦が、本当に無謀のまま終わってしまう……。
ドライバーを握り、おじい様がティーグラウンドへゆっくり歩いていく。
……あれ? なんだかちょっとおかしい。
気のせいか、おじい様の足取りがふらついているように見えたのだ。