強引社長といきなり政略結婚!?
◇◇◇
私の部屋に顔を出した多恵さんから「朝比奈様がお見えでございます」と言われたのは、その日の午後十時過ぎのことだった。
いつ連絡がくるかと、スマホを握りしめてベッドでゴロゴロしていた私は、弾かれたように飛び起きた。
多恵さんのすぐうしろから一成さんが顔を覗かせる。当然だろうけど、疲れた表情をしていた。
「ごめん、汐里。寝てたか?」
「いえ、一成さんからの連絡を待っていたので」
多恵さんが「失礼します」と部屋から下がると、一成さんは私のいるベッドに腰を下ろした。
その隣に私も座る。
「おじい様の手術は?」
「終わったよ」
「……成功、ですよね?」
息を飲んで答えを待つと、一成さんは「ああ」とうなずいた。
「よかった……」
お腹の底から息を吐き出した。