強引社長といきなり政略結婚!?
多恵さんは、私よりも不安そうだった。
両手を胸の前で組み、神様に許しを請うようにも見える。
「負けたも同然だから……」
おじい様の具合が途中で悪くなったとはいえ、勝負はもうすでについていた。
「そんな……」
多恵さんが泣きそうな顔になる。
「やだ、多恵さんってばそんな顔しないでよ。もう、なるようにしかならないんだから」
それは建前。本音では私だって、どうしようかと不安でたまらない。なにより、おじい様の容態が一番気がかりだ。
「私、シャワー浴びてくるね」
体中が痛いとはいえ、じっとしていると心配事ばかりが浮かんでどうにもならなくなる。
多恵さんが入れてくれた紅茶をひと思いに飲み干し、バスルームへと向かった。