強引社長といきなり政略結婚!?
私を引き離した一成さんが顔を覗き込む。訴えるような目つきだった。
「それに言ったはずだぞ。俺は汐里以外とは結婚しない」
そう言われて胸が苦しくなる。
私もそう。一成さん以外は考えられない。
でも、おじい様が倒れてしまった以上、再勝負もままならない。
それ以前に、もう一度対決をしたところで、私が綾香さんに勝てるはずもないのだ。それは今日の状況を見て、私が一番よくわかっている。
多分おじい様は、はなから許す気などないから、私が絶対に勝てない方法で決着をつけようとしたのだから。
その時、一成さんの胸ポケットからスマホの振動音が聞こえてきた。
スマホを取り出した一成さんは「病院からだ」と言って、私から少し離れて応答し始めた。
おじい様になにかあったのかな……。
容態が急変したのだとしたらどうしよう。
不安な気持ちがさらに膨らむ。
「……はい、わかりました。すぐに戻ります」
一成さんは通話を切ると、私に向き直った。