強引社長といきなり政略結婚!?

「なにかあったんですか?」

「意識が戻ったそうだ」


……意識が。よかった……。
ほぅと息を吐き出す。


「いったん病院へ戻る」

「はい」

「また電話するから」


私の髪を撫で、一成さんが慌ただしく私の部屋を出る。
見送ろうと玄関まで行ったところで、父と母が姿を現した。


「一成くん、会長の様子はどうだい?」

「意識が戻ったと、たった今病院から連絡がありました」

「そうか。それならよかった」


父は安心したように口元を綻ばせ、その隣で母も「よかったわ」と安堵の表情だった。


「ご心配をおかけして申し訳ありません」


一成さんが頭を下げると、「いやいや、とんでもないよ」と父が右手をヒラヒラとさせる。


「一成くんも、看病で倒れたりしないようにするんだよ」

「はい、ありがとうございます。では急ぎますので、これで失礼します」


一成さんは私に微笑んだあと、玄関から出ていったのだった。

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