強引社長といきなり政略結婚!?

◇◇◇

翌日、アルバイトを終えて店を出ると、晴れ渡っていたはずの空には黒い雲が広がり、雨がポツリポツリと降り始めていた。

今朝早くに一成さんから入ったメールによると、おじい様の意識は一旦戻ったものの、またすぐに眠ってしまったそうで、まだ話をできる状態ではないそうだ。ただ、容態は安定しているらしい。

手の平を上にして空を見上げる。
さて、困ったな。
こうしている間にも、雨が次第に強くなっていく。雨雲が、私を本気で濡らしにかかってきた。傘も持ってないし、自転車を飛ばして帰るしかないか。

よし!と意気込んだところで、店の前に黒い高級車が停車した。
……浩輔くんの車だ。

いろんなことが一気に起きたせいで、すっかり忘れていた存在だった。
助手席のパワーウインドウが開く。


「汐里、送ってくよ」


浩輔くんが体を乗り出して、声を張り上げる。


「ううん、大丈夫。自転車を置いていくわけにいかないから」

「あとで取りに来ればいいじゃないか」

< 311 / 389 >

この作品をシェア

pagetop