強引社長といきなり政略結婚!?
一成さんから、おじい様のことでなにか連絡が入るかもしれない。今、手放すわけにはいかないのだ。
「ほら、おいで」
浩輔くんがもう一度助手席の窓から私を呼ぶ。
――もう!
軽く地団駄を踏み、仕方なしに浩輔くんの車に乗り込んだ。
思いきり突き出した私の唇を見て、浩輔くんが「そんなに拗ねないの」と鼻を鳴らす。
「だって、こんなやり方はひどいじゃない」
バッグを奪うなんて卑怯だ。
「ごめん。でも汐里と話がしたかったからさ」
鼻先をツンと助手席側の窓に向けた。
ゆっくりと車が走り出す。そうこうしているうちに、雨は大きな粒となってフロントガラスに叩きつけ始めた。
「藤沢専務もひどいことをするよな。アーロンと組むと張り切っていたくせに、代表権をもらえるとなった途端、手の平を返すようにコンラッド開発になびくんだから」