強引社長といきなり政略結婚!?
「あとでちゃんと送り届けるから。俺のこと、少しでもかわいそうだと思うなら、ちょっと付き合ってよ。幼馴染のよしみでさ」
「そんなのズルイ」
人の優しさにつけ込むなんて。
「強引だったのは謝る。少し汐里と話していたいだけなんだ」
軽い調子だったくせに、浩輔くんは突然、心情に訴えかけるように態度を変える。
浩輔くんに切々と言われて、つい心が絆される。それ以上、『嫌だ』と突っぱねる尖った気持ちを削がれてしまった。
小さく息を吐き、シートに座り直した。
「汐里のそういう優しいところ、好きだよ」
浩輔くんが、とんでもないことをサラリと言う。
「べ、別に優しくなんてないから。バッグを人質に取られてるから仕方なくだし。それに、あまり軽々しく『好き』とか言わないほうがいいよ」
「もしかして、ときめいたりしちゃった?」
「――ち、違うから!」
茶化す浩輔くんに強く否定する。