強引社長といきなり政略結婚!?
運転席側のパワーウインドウが下げられ、その向こうには女性がにこやかに笑っている。目に入った看板で、コーヒーショップのドライブスルーだとわかった。
「なにもいらない」
「そう言うなよ」
「いらないったら、いらない」
「じゃ、俺と同じものでいいよね」
浩輔くんはそう言って、店員にホットのキャラメルマキアートをふたつ注文した。
しばらくして浩輔くんに店員からカップがふたつ手渡される。彼はそのうちのひとつを私に差し出した。
「はい、どうぞ。……このままだと運転できないから汐里のことを家まで送り届けられなくなるけど、それでもいい?」
いつまでも受け取らずにいる私、浩輔くんは呆れるように言った。
帰れなくなるのは困る。渋々受け取り、「ありがとう」と一応お礼もした。
「冷めないうちに飲んで」と言われ、尖らせた唇のまま口を付ける。甘い香りと味が口の中に広がって、ささくれ立った気持ちがほんの少し和らぐ気がした。
雨が降りしきる中、再び車が走り出す。