強引社長といきなり政略結婚!?
「まさか、孫の嫁選びの心労で?」
浩輔くんですらそう考えるということは、おじい様本人も一成さんも、関係する人たちはみんなそう考えている可能性は高い。
私と一成さんが出会わなければ、おじい様は体調を崩さなかった。そう考えてもおかしくない。
膝に置いていた私の手に、ふと浩輔くんの手が重ねられる。とっさに引き抜こうとしたものの、強く握られ逃げられない。
いつの間にか、車は路肩に停められていた。
「そんな険しい道なんかやめちゃえば?」
浩輔くんが私の顔を覗き込む。
「負い目を感じたまま付き合っていくのは苦しくない?」
少なからずそう感じていただけに、的を射たことを言われてぐうの音も出ない。強気に言い返す勢いを一気に失ってしまった。
その時だった。私のバッグからヴヴヴという音が、車内の空気を震わせる。きっと多恵さんだ。
とっくに帰宅している時間。まだ帰らない私を心配してかけてきているのだろう。
「バッグ返して。放っておいたら多恵さんが警察に電話しちゃうから」