強引社長といきなり政略結婚!?
拳をぎゅっと握りしめ、父に抗議する。
いくら経営状況が最悪だとはいえ、今日会ったばかりの人に、娘と会社の両方を差し出すなんて迂闊すぎるじゃないか。
「汐里、その人に対する印象というのはね、だいたい会ってすぐにわかるものだよ。長年、会社のトップとしていろんな人に会ってきているからね。信用ならない相手なら、早々に追い返しているところだ。彼なら汐里も会社も任せられると思ったから、こうして協調路線で対話が進んでいるんだよ。まさに、WINWINってことさ」
ニコニコと上機嫌の両親を見て、不安が大きく膨らんでいく。
いつから彼がこの場所にいるのか知らないけれど、ものの数十分で企業買収と結婚などという大それた“商談”をまとめてしまうなんて。
「それじゃ、改めて自己紹介を」
そう言うなり彼は立ち上がり、私のほうへ身体を向けた。
「コンラッド開発の社長、朝比奈一成、三十二歳。よろしく」
――よろしくされても困ります!
私の隣に座る母ときたら、「素敵」なんて言って拍手を送っていた。